”アイデア”を生む方法の一つとして「問題逆転」という方法があります。これは、チャールズ・トンプソンによる発明であり、発想の狭さを自覚させる簡易ゲージとして活用してみてはどうでしょうか。
問題逆転の方法について
1 問題や課題や既存のアイデアを言葉で表現する。
例:売上が足りない。
2 言葉にした問題の一部を否定形や対義語に置き換えて<逆転〉する。
例:売上が足りない→売上が多すぎる。
3 裏返した問題についての<逆転解決策〉を考える(他の技法を使う)。
例:売上を減らす案を考える→売り渋る、自らネガティブ広告をうつなど。
4 <逆転解決策〉がいくつか出せたら、(一部変更して)元の問題の解決に使えないか考える。
例:売り渋る→期間限定や地域限定で販売しプレミアム感を出す。
5 4でできた解決策が使えるかどうか確かめる。
問題逆転の事例について
おとり捜査
おとり捜査は、犯罪調査のいくつかの要素を〈逆転〉したものである。
通常の犯罪調査は、「犯罪者を特定し、居所を突き止め、警察官が出向いて、逮捕する」が、これに対して、おとり捜査では「犯罪者を特定せず、居所を突き止めず、こちらが出向かず(犯罪者から来てもらって)、逮捕する」。
これらの<逆転〉が他の部分にも波及していくことに注意が必要。
警察は通常、犯罪の機会を取り除き、犯罪の発生を抑制する(防犯に努める)が、おとり捜索では、これらは〈逆転)される。すなわち、あえて犯罪の機会をつくり出し、犯罪の発生を促進しなければならない。
問題逆転の評価について
失敗を人工的につくるメリット
問題逆転の手法のメリットは、シンプルで実施が容易なわりに、発想の枠を変え、これまで検討してこなかった可能性を探らせる効果が大きいところである。
デメリットは、真面目で固い頭には、簡単すぎるゆえに余計にバカバカしく感じられるところだ。
「売上や利益を下げるアイデアをわざわざ考えるのに何の意味があるのか」
「そんな無駄や失敗は、わざわざ考え出さなくてもそこら辺にいくつでも転がっているじゃないか」
我々凡人の目には、成功は希少であるが、失敗は数多く遍在しているように見える。
では、失敗するまで、運任せにしてわざわざ待たなければならないのだろうか。
成功を言葉で表現して、その一部を否定形や対義語に置き換えれば、失敗は人工的につくり出せる。これが問題を裏返す(problem reversal)の意義の1つ目である。
※あえて失敗を見ることで、発想の幅が広がるもう1つ、問題を裏返すことは、問題の前提を揺さぶる意義がある。
たとえば、警察にとって防犯=犯罪を抑制することは大前提であるが、おとり捜査の成立には、この前提に手をつける必要があった。
問題が通常の手段では解決することが困難な場合、時に目的に反するように見える手段が有効/必要なことがある。
立ちふさがる障害を迂回するには、目標から一旦遠ざかるルートを選ぶ必要があるように。
障害と目標の全体を俯瞰し一望できるなら、ルートの選択は容易であり、我々は自信をもって遠ざかるルートを行くことができるが、現実には障害と目標のあり方を最初から完全に知ることができるケースは稀である。
試行錯誤はあらゆる方向に向けて行う必要がある。したがって、目標に意識が行きすぎるなら、またそのせいで発想の幅が知らず知らず狭まっているなら、問題を裏返すことは多くをもたらす可能性がある。
問題を裏返すことは、我々の思考の通常運転を邪魔し、そのバランスを崩すことだ。これによって自然な思考や連想が中断され、バランスを取り戻そうとする中で新しい疑問や視点が浮かび上がるかもしれない
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